「社会保険料が上がる」と言う前に——賢い中小企業が取るべき3つの人件費戦略

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社保適用拡大は「コスト増」だけではない

2026年10月の社会保険適用拡大(106万円の壁の撤廃)が近づく中、「うちは人件費が上がって困る」という声を経営者の方々からよく聞きます。気持ちは十分わかります。利益率が薄い中小企業にとって、保険料の負担増は無視できない問題です。

しかし一方で、この制度変更を「きっかけ」として、人事・人件費の戦略を整理した企業は、むしろ組織体制が強くなるケースが見受けられます。

今回は「コストの話」で終わらせず、この変化を前向きに活かすための3つの戦略をお伝えします。


戦略① 短時間労働者を「戦力」として再設計する

社会保険に入ることで、従業員の側には大きなメリットがあります。将来の年金額が増える・傷病手当金が受けられる・健康保険での各種給付が受けられる——これらは、働く側にとって「セーフティネットの強化」を意味します。

この点を正しく伝えることで、「うちの会社はちゃんとした職場だ」という信頼感につながります。社会保険への加入を「コスト増」ではなく「採用の武器」として捉えることで、定着率の向上にもつながります。

採用難が続く今、「うちの職場は社会保険完備」という事実が持つ価値は、以前より確実に高まっています。


戦略② キャリアアップ助成金と組み合わせて負担を軽減する

前述のとおり、キャリアアップ助成金では、新たに社会保険の適用対象となった短時間労働者の賃金を引き上げたり、正社員化を進めたりすることで、会社に助成金が支給されます。

たとえば、社会保険加入にあわせて時給を引き上げ、同時に正社員化を進めた場合、1人あたり数十万円単位の助成金を受け取れる可能性があります。

「保険料が増える分だけコストが出ていく」と考えるのではなく、「助成金でそのコストの一部を回収する」発想でプランを組み立てることが重要です。


戦略③ 労働時間の再設計で「週20時間未満」の選択肢も検討する

週の所定労働時間が20時間未満であれば、今回の適用拡大の対象外となります。業務内容やシフト設計によっては、労働時間を19時間台に再設計することで、対象者数を絞ることができます。

ただし、これはあくまで「法的に認められた範囲での合理的な労働設計」であるべきで、実態として20時間以上働かせながら書類上だけ19時間とするのは問題です。労働時間管理の実態と書類の整合性を保つことが前提となります。

また、この方法はすべての企業・職場に適しているわけではありません。業務の連続性が必要な職種では、むしろ短時間化よりも正社員化のほうが現実的なケースもあります。自社の状況に合わせた判断が大切です。


2026年10月に向けたロードマップ

4〜5月:現状把握フェーズ 対象者の抽出・保険料試算・助成金活用の可能性チェック

6〜7月:方針決定フェーズ 対象者への説明・雇用条件の見直し・就業規則の改訂

8〜9月:事務手続きフェーズ 社会保険の加入手続き・給与計算システムの変更・保険証の交付

10月:施行 新制度のもとでの運用開始


まとめ

制度変更は「対応するだけ」では終わりません。変化を機会として捉え、採用・定着・生産性向上につながる手を打てるかどうかが、これからの中小企業の競争力を左右します。

社会保険の適用拡大への対応や、助成金活用を組み合わせた人件費戦略についてのご相談は、当社取締役であり社会保険労務士の馬場が対応いたします。ひとつひとつの課題を一緒に整理しながら、貴社に合った最善の対応策をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。

(出典:厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について、厚生労働省 キャリアアップ助成金)